イノベーター湯 Vol.44 中村悟さん(わくわくキッチン子ども食堂)
目次
別府には別府八湯がありますが、もう一つ隠された湯があります。湧き上がるアイデアを形にした起業家が集まる、その名も「イノベーター湯」。
第44湯目は「わくわくキッチン 子ども食堂」の中村 悟(なかむら さとる)さんにインタビューしました!
わくわくキッチン 子ども食堂」とは、どのような場所ですか?
「わくわくキッチン 子ども食堂」は、子どものための食堂という役割だけでなく、地域の居場所も同時に提供しています。地域や年齢などを限っていないため、幼稚園・保育園に通う子どもからお父さん・お母さんまで、誰でもサービスを利用できます。
居場所づくりとして、わくわくキッチンに来る子ども達には、一緒に宿題をしたりご飯を食べたりしながら仲良くなってもらいます。そうして作られたコミュニティには、学校や住んでいる地域が違う友達もいます。わくわくキッチンがそんな居場所を作ることで、子ども達が周りの目を気にせず、学校や家庭での悩みを打ち明けられるようになればいいなと考えています。
わくわくキッチンでは座る席をシャッフルして、よりコミュニケーションの機会を与えるようにしています。
事業を始めたきっかけは?
私は自分の子どもを小学校に送る時、友達を作ってあげたくて他の子どもに声をかけていました。そんな中、「今日何食べた?」と質問すると、想像以上に朝ごはんを食べていない子が多いことに気づいたんです。現在は、7人に1人が相対性貧困家庭の子どもだと言われていて、学校給食だけが栄養源になっている子どもも少なくないことを知りました。
私自身、幼少期に安心して家に帰ることができない環境で育ったこともあり、当時は寂しさや居場所がほしいという思いを抱えていました。その経験から、今の子ども達の悩みを少しでも解決したいと思い、子どもの貧困フォーラムなどに出向くようになりました。その際、全国で実施されている「子ども食堂」を知り、自分も取り組んでみたいと思ったのが事業スタートのきっかけです。
また、自分も子育ての経験をして、親の大変さを知りました。そこで、子ども食堂が1食でも栄養のある食事を提供できれば、親御さんの休息時間を増やすことができると思います。さらに、親御さんの心に余裕が生まれれば、親子関係にも良い影響が出ると期待しています。
コロナウイルスの影響で食事をすることが難しかったので、
イベントとして子育て物資の配布や職業体験型イベントなどを行っています。
どんな思いで、地域に居場所を提供していますか?
今の時代…地域での関わり合いが気薄になってきているように感じます。実際に子ども会も減少していて、地域での交流の機会が少なくなっています。そのような環境だと、家庭で何か問題が起こっても、異変に気づいてあげることができません。事が重大になる前に、地域の目で気づくことが大切です。とはいえ、共働き家庭の増加などに伴い、自治体の活動に参加できる大人も減少しています。そこで子ども食堂は、気軽に参加できる、地域間交流も可能な場所として大活躍します。どこかに属することもなく、無料で参加できるため、子ども達も抵抗なく子ども食堂を利用できると思います。
地域の居場所として、子どもと大人が交わって交流している様子です。
事業を行う中で印象に残っていることはありますか?
わくわくキッチンは、マニュアルなしの手作りなので、どれだけ子どもに響くのか不安がありました。しかし、実際に開いてみると、保護者からは「子どもが毎回楽しみにしている」「今度いつあるの?」と電話がかかってくるようになりました。特別楽しいことをしているわけではないのですが、子どもが自然と自分から楽しんでくれているように思います。きっとそんな居場所があれば、子ども達が大きくなった時に、ふと思い出してくれるような気がします。そして、自分も子ども食堂をやりたいと思ってくれたら、とても嬉しいです。
毎回たくさんの子どもたちが来てくれています。
今後の展望は
事業を拡大するというよりも、「いいな」「自分もやってみよう」という人を増やして、自分も相談に乗ったりしながら、居場所をたくさん作ることに貢献したいです。子どもと向き合うためには、1人の力では限界があるように思うので、地域で志ある人を増やして、子ども食堂という地域の居場所がたくさんできることを目標にしています。
また、わくわくキッチンとしては、現状維持が目標です! コロナウイルスの影響で数年は食事の機会が作れず、イベントだけを実施していたので、元のように子ども達が学校帰りに寄れるような状態にするために、地道に努力したいです。
インタビュアー 池邉 さわ (立命館アジア太平洋大学国際経営学部3年)