B-bizジャーナル

「イノベーション創出型ワーケーション」@別府市鉄輪リポート 3泊4日でお仕事×温泉三昧【前編】

目次

“イノベーション創出型ワーケーション”

いきなりの横文字、しかもふたつ。

ものすごーーーーーーくかみ砕くと“別府旅行中にちょいと仕事して、なにか新しいことが起こったらいいよね”という企画です。

ワーケーションとは

「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語。働きながら休暇をとる、アメリカ発のワークスタイル。旅先で仕事をして出勤扱いになる、新しい働き方のひとつとして注目が高まっている制度。地方自治体からは、地方創生の新しい機会としても期待が高まっている。

リゾート地で働いても給料がもらえる!やった」となるか、「休暇なのに働かなければいけない、つらい……」となるか、意見は分かれるところ。制度を取り入れる企業も増えてきたものの、まだ試行錯誤の段階。

イノベーションとは

イノベーション(英: innovation)とは、物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと。一般には新しい技術の発明を指すという意味のみに理解されているが、それだけでなく新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革を意味する。

 

(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 

学生×社会人=?
異業種の人間×8人=??
ワーケーション×鉄輪=???

いったい何が起こるのか、実証実験。主催者すらどうなるかわからないまま、企画がスタートしました!

今回、ワーケーションの拠点となったのは「a side -満寿屋-」。築80年の旅館「満寿屋」をリノベーションしたコワーキングスペースです。

 

昔ながらの雰囲気を残し、シンプルですっきりとした心地よい空間。

 

湯けむりがあちこちに立ち上り、別府でも特に温泉街の情緒が満喫できる鉄輪エリアに位置しているのも特徴。

 

目の前には、別府ジモ泉の中でもコアな「すじ湯温泉」があります。水もない、石鹸も使えないという玄人向けの湯ですが、行き詰まった脳みそをリフレッシュするにはぴったりの温泉です。

 

太陽がジリジリと照ったかと思えば、天気雨やら雷やら不安定な天気の初日。まるでこのワーケーションの行く末を暗示しているような……???

 

そんな中、スニーカーやサンダル、Tシャツに短パンといったラフな格好で参加メンバーが続々と集結。なんだかとっても“ワーケーションぽい”出で立ちです。

 

それでは、別府市鉄輪で「イノベーション創出型ワーケーション」始まります!

 

【1日目】 welcome to BEPPU! 和やかムードで順調な滑り出し

はるばる東京から参戦 メンバー紹介

東京からの参加者が大半の中、別府出身者や別府にある大学・APU(立命館アジア太平洋大学)卒業生も参戦!

まずはメンバーの自己紹介から。

 

アジアクエスト 岩崎友樹

 

grooves 田中祐輔

 

KG PLANNING OFFICE 北川雄一郎 

 

TOTO 池本拓児

 

凸版印刷 矢尾雅義

 

博報堂 栗原清

 

Plug and Play Japan 李暢(チャン・リー)

 

三菱総合研究所 笠田伸樹

 

ふらりと鉄輪散策 とにかく湯けむりまみれ

自己紹介も済み、メンバー揃って湯けむりもくもくの鉄輪エリアを散策!

 

細い路地を歩いたり、蒸し湯をみたり、湯雨竹をみたり、勢いよく吹き上がる蒸気をみたり。

 

「硫黄臭がすごい!」

「こんなに吹き上がるとは!」

温泉のエネルギーを体感し、参加者たちからは様々な歓声が上がりました。まるで小学校の時の遠足のようで、会話にも花が咲いています。

 

昔ながらの湯治宿 別府ならではの貸間旅館

あみだくじで決めたそれぞれの宿にチェックイン。今回お世話になる「みかさ屋」「みゆき屋」「ひろみ屋」は、いずれも湯治宿です。

 

湯治宿は個性豊か。人懐っこい女将さんがいたり、地獄蒸しができたり、温泉が24時間利用できたり、それぞれに特徴が際立っています。

 

鉄輪では古くからある「貸間(かしま)」スタイルの宿が多く残っています。湯治滞在中、自分の家のように部屋を使うシステムで、基本は素泊まりです。

 

取材したのは40年前から続く「ひろみ屋」。近年しばらく休業していたものの、今年に入って再開したそうです。現在は海外からのお客様が半分を占めています。

 

茶目っ気たっぷり、めっちゃパワフル、おしゃべり好きの女将さんは、安波美保さん。父親である安波博巳さんが建てた宿なので「ひろみ屋」なんですね!

 

「ひろみ屋」の屋内には、至る所にコネタが散らばっています。木彫りの熊の顔、に黄色いたぬき様。

 

スタッフのカナダ出身・ケニーさんは物腰柔らか、笑顔が素敵です。

 

大いに盛り上がるディスカッション!自立と自律を考える

『自立と自律 ~「働き方改革」時代のキーワード』
大分フットボールクラブ 経営改革室長 兼 事業本部長 神村昌志氏

ここから、ワーケーション本番!まずはサッカーチーム「大分トリニータ」神村さんの講演です。

 

「働き方改革の話をしようと思っているんですが、まず!パソコンは閉じてください!」との言葉に、パタンパタンとパソコンを閉じる参加者たち。

 

そして配られたのは、手書きの書き込みシートです。

 

「会社には老若男女、年代も考え方も家庭環境も違う、さまざまな人たちが働いています。働き方改革ってよく言うけれど、一体『誰のための働き方改革なのか』。それをとらえるためのワークシートです。みなさんでディスカッションしながら進めたいと思います」。

 

神村さんの言葉を受け、席が近い同士4~5人でグループを作りました。ここでは、別府市の市役所職員やAPUの学生たちも参加しています。

 

「両親世代はなぜあんなに働いたのか、働けたのか?」「朝ドラなどサクセスストーリーはどの年代でも感動する、その理由は?」「なぜ隣の人は楽しく働いているのか?」などのお題が出され、それぞれのグループでディスカッションが大盛り上がり。

 

インドでも公務員が安定していて人気がある」というAPU生のManuさん。へぇーという声が上がります。

 

苦しんで頑張った人がえらいという、仏教的観念があると思う」との発言に一同納得。リモートワークを会社で実践した苦労話も飛び出しました。

 

「言葉を選ばずに言えば、働き方改革と教育改革は少し似ていないだろうか?」と言う神村さん。時短が叫ばれるなか、業務の効率化はもちろん推進すべきだが“本当に変えなければいけない”ものは何だろう?というお題に対して……

 

逆に市役所がいかに進んでいないかの話も。メール送信すると30分後に届くというシステムに驚き、会場がどよめきます。

 

現状をふまえ、これから先どんな働き方をする時代になるのかもディスカッションしました。

 

講演の最後、「経済は相対性であり、戦いです。豊かさや平穏さは絶対性で、自分で決めればよいことです。新しい働き方のキーワードは『自立と自律』。まず自分の足で立つ、そして自分だけで立つのは厳しい時に仲間をもつこと。心地よく働けることだけを中心に考えてしまうと、経済は衰退してしまうのではないでしょうか。

 

何のために働き方を変えるのか”その根本を忘れずに『私』によりすぎないようバランスをとること。いつの時代も働く意欲・志・使命感をもつことが必要だと思います」と、締めくくった神村さん。

 

初日から、参加者の声が飛び交い意見交換する、活気ある時間でした。

 

温泉の蒸気で蒸す別府名物グルメ「地獄蒸し」を堪能

会場は「a side -満寿屋-」から徒歩3分の「大黒屋 」。

 

初日の夜、まずは缶ビールでカンパーイ!

 

別府グルメとして絶大な人気を誇る「地獄蒸し」を満喫します。地獄蒸しとは、温泉の蒸気を利用して食材を蒸す調理法のこと。

 

地獄窯と呼ばれる窯に、野菜やたまご、肉に魚介類など好みの食材を入れて……あとは蒸しあがるのを待つだけ!

 

完成!!!!!!

素材の旨味がぎゅぎゅっと閉じ込められた地獄蒸し料理は、ヘルシーで美味しくて最高なんです。

 

湿気が多く暑い夜。地獄の熱気の中、汗をだらだら流しながら食べる地獄蒸し。メンバーみんなの箸が進む進む!

 

お酒も入り、大いに盛り上がる一同。月明かりに照らされながら夜は更けてゆきました。

 

***

それぞれのお宿へ、次の飲み会場へとばらけるメンバーたち。都会では味わえない“暗さ”も楽しみのひとつです。

 

取材した「ひろみや」には地獄窯があるので、見せてもらうことになりました。

 

女将さんの美保さん、「せっかくだからたまご蒸そうか!」と、地獄窯にたまごを投入。なんと15時間蒸すんですって!

 

たまごを地獄窯に入れ蓋をしたら、あとは待つのみ!

明日の朝を楽しみにしながら宿のおふろ(もちろん温泉)で汗を流し、就寝です。

 

【2日目】朝からガツンと激震!白熱&濃厚な進行

海辺ランニングや早朝散歩を楽しむ朝

爽やかに晴れ渡る2日目、それぞれの朝を迎えました。

 

早朝ランニングに向かったメンバー。心地よい別府の海風を感じながら、別府湾沿いをラン!

 

朝起きて近所をお散歩するのも気持ちのよいもの。

 

坂道をのぼった後に見える“ザ・別府”の景色も宿のすぐそばから堪能できます。

 

鉄輪散歩を終えて部屋に戻ると、ドアの前には地獄蒸したまごがありました。

 

白身が茶色くなるのは、地獄蒸したまごの特徴!しっとり、パサパサしていない地獄蒸したまご。とーーーーってもオ・イ・シ・イ!別府ならではの朝ご飯です。

 

容赦なくメンバーをぶった切る出口学長 戦慄(?)の講演

『創造力を育むには』
立命館アジア太平洋大学(APU) 学長 出口治明氏

午前9時、2日目のワーケーションはAPU学長、出口治明氏の講演からスタートです。

APUがどんな大学なのか、何を目指すのかというお話から始まり、「今の大学のキャリア支援は100%間違っているんです」と断言する出口学長。ピリリとした空気で会場が静まります。

 

「イノベーションを育むには世界をフラットにみる必要があります。どんな問題でも、たて・よこ・数字をみれば事実がわかるんです。エピソードではなくエビデンスで見ないと世界の姿はわかりません。イノベーションを育む条件は3つ、女性・ダイバーシティ・高学歴です」

 

出口学長は現状を表す数字・エビデンスを出しながらどうすればよいか、どうすべきか、淡々と話を進めていきます。わかりやすい例え話を交えながらのお話に、首がもげるほどうなずいてしまいます。

 

話のスケールと圧倒的な説得力。一言一句聞き漏らしてはいけない!そんな感覚で、参加者たちは真剣に話に聞き入りました。

 

そして質問タイム。幾人かの質問をバッサバッサと斬ってゆく出口学長。

 

不勉強ですね」

「それはありませんね」

古い考えですね」

違いますね」

 

仏のような笑顔と穏やかな関西弁、な・の・に!容赦なく斬られてゆく参加メンバーたち。見ているだけでハラハラしたり、胃がキリキリとする緊迫した空気でした。

 

しかし最後は笑顔で終了。

 

「さっきの『強み弱み』の話ですけどね、『強みをいかそう・弱みを無くそう』なんてよく言うでしょ。本当は強みも弱みも同じことで、長所と短所は一緒。弱みとか強みとかいう発想を捨てて、全部個性と認めて、そのうえで議論してほしいです」。

 

そう言いながら、タクシーに乗り込み去ってく出口学長。最後の最後まで、ためになるお話を聞けました。

 

◎本日の出口学長語録◎

・世界をフラットに見るには、たて(歴史)よこ(世界)算数(数字)の視点が必要
・エピソードではなくエビデンス
・ホモサピエンスは集団保育が当たり前。それが先進国の共通概念
・アイデア勝負の時代、高学歴は不可欠。勉強しないとアイデアは出ない
・距離が遠いものを掛け合わせるのがおもしろい。それがダイバーシティ。
・キャリアプランを作るなら、ゆるゆるに作ったほうがいい
・大学生が勉強しないのは100%企業のせい。採用基準に成績がないから勉強しないのは当たり前
・思いついたアイデアは全部やってみる。試みは100%運。将来なにが起こるかは誰にもわからない。ダーウィンの言う通り。

 

学生のアイデアを現実レベルのビジネスへ 社会人×学生で生まれるもの

出口学長の講演の後は「事業アイデアディスカッション」です。

 

起業を考えているAPU生の事業アイデアについて、参加メンバーがあれこれ聞いたり意見したりする時間。あみだくじで3チームに分かれ、それぞれの学生と向き合います。1時間行ったら休憩を挟みチーム替えを行い、様々な人たちとディスカッションします。

 

学生参加メンバーは下記の通り。

「LEGAME」Nazmus Sadat/前多 智啓

 

「JIITAK」小林夢輝/Anty Joseph /Manu Jose

 

「出口塾」内山浩輝

 

社会人たちが知りたいのは“なぜ”

社会人勢は学生さんたちに聞きたいことがたくさんある模様。質問のシャワーがガンガンと降り注いでいます。

 

・なぜやるのか?
・それをやる意味は?
・なぜ日本なのか?
・どうしてそれでないとダメなのか?
・具体的な数字や、現実の展開はどうするのか?

 

学生が考えている事業についての弱点や、事業そのものの理由や意義などを聞く声が目立ちました。事業アイデアの弱点や、実際にビジネスとして成功させるために必要なことが、次々と洗い出されていく感じです。

 

ハードフィードバックに戸惑い気味の学生

ビジネスの第一線で活躍する社会人たちからの声に、圧倒され気味の学生たち。次々と繰り出される質問に熱を込めて返答します。

 

実際問題どうなるのか?鋭い視点から率直なアドバイスや意見が飛び交い、うなずいたり納得したり、それは違うと反発したり。それぞれの学生ごとに、様々な心境に至ったようです。

 

1日で3回の事業ディスカッションは、かなりハードなものでした。3回目が終わるころには参加メンバーも学生もぐったりお疲れ気味。

 

ディスカッション終了後、学生だけを集めて話を聞いてみました。

 

学生側としては、ビジネスの実践的なアドバイスよりも、具体的な企業や人とのつながりや、意見を求めて参加した人が多い印象。社会人の求めるものと学生の求めるモノ、今回のディスカッションではその点にズレがあったのかもしれません。

 

ディスカッションの合間の昼食は「ひかり食堂」へ

白熱するディスカッションの合間の昼休み、参加者の10名ほどが向かったのは「ひかり食堂」。

別府名物グルメのひとつ、「別府冷麺」が美味しいお店として有名です。昔ながらの佇まいで、店内は時間が止まったかのような趣があります。

 

凍らせたスープが入っている別府冷麺は、地元民のファンも多数。

 

麺は自家製ですよ。

 

とり天も絶品!定番メニューから別府料理まで、何を食べても文句なしのおいしさです!!

 

方向転換 以降のスケジュールを大幅変更

 

学生とのディスカッション終了後は、次の日のスケジュールについて話し合いました。

 

当初の予定では、3日目に今日のディスカッションをとりまとめ→話し合いでチーム編成→今後の事業のロードマップを作成する流れでした。

 

しかし、3回のディスカッションを経て方向転換。

 

「社会人と学生の双方にメリットがあるプログラムでないと実施する意義がないかもしれない」

「実際、学生と話してみると求めていることの違いを実感した。もう少し彼らのメリットとなるプログラムを再考する必要がある」

「学生から申請があった場合のみ、個別に時間をとって話をするの方がよいのでは」

「このままだと、ワーケーションの“ワー”ばかりになってしまうかもしれない

 

との意見があり、翌日はワークとフリーをバランス良く組み合わせた日に決定しました!一同、晴れやかな笑顔です。プログラムを実施しながら、より良い方向に柔軟に転換していきます。

 

夕方からは、ディスカッションに参加した別府出身のメンバーが“車で行く別府めぐりツアー”を敢行。数人が参加しました。他の人は残って仕事をしたり、温泉に行ったり、夕飯までの時間をそれぞれに過ごします。

 

夜の自由時間 鉄輪の居酒屋で乾杯

夜はAPU時代にLiさんが通ったという「魚豊寿し」に集合。

 

大分の新鮮プリプリのお刺身をはじめ、とり天や魚介類、天ぷらなどを堪能しました。

 

後半の様子はこちらからご覧ください!

TEL 0977-77-4513
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